【コロナ前夜】
砺波高校は平成28年度に富山県教育委員会よりICT教育モデル校に指定されました。この年にはWindowsタブレット20台、無線LANアクセスポイント3台、無線プロジェタ3台が納入されました。また、公開授業やマイクロソフト社員を招いてタブレット端末を活用するための教員研修を行いました。
さらに平成29年にはWindowsタブレットが40台に増え、すべての普通教室に無線LANアクセスポイント・プロジェクタ・スクリーンが配備されました。
平成30年には国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授を招いて教員研修会を行いました。その中で学校広報の重要性と授業におけるICTの有効活用が強調されました。
令和元年11月にはGoogle Workspace for Educationの概要についてICT研修会を行いました。Google認定のトレーナーとイノベーターが研修の補助にあたりました。Google Workspace for Educationの概要やGoogle Classroomの使い方などの研修を行い、教育クラウドの利活用に向けた知識と技能を身に付けることができました。
【手探りでコロナ1年目・・・】
令和元年12月に中国で新型コロナウイルス肺炎患者が複数報告されました。グローバル化の中でウイルスは瞬く間に世界に広がり、日本でも令和2年1月に感染者が確認されました。そして2月下旬、政府は3月2日から春休みまで臨時休業を行うよう、要請しました。
富山県教育委員会もこの要請に応じ3月2日から休校となり、3月中の特別編成授業が行えないまま春休みとなりました。本校は早くからICT環境を整えていたため、オンラインでのSTや授業内容をスライドや動画で配信しました。
また、大学に合格した卒業生が在校生に高校時代の学習や3年次での受験について話す「合格者が語る」という行事については動画を配信し、生徒は自宅で視聴しました。
しかし、春休みが終了しても新型コロナウイルスの感染拡大は収まらず、休校が5月中旬までおよび、登校して対面での授業が行えない状況が続きました。2,3年生は4月7日のみ登校、1年生は4月8日入学式のみ登校し、その後は休校となりました。家庭での学習に必要な教材などは各家庭へ郵送しました。
1年生には入学式直後のホームルームにてGoogleアカウント・パスワードを配布し、使用方法を説明しました。個人アカウントと学校アカウント切り替えがうまくできないトラブル等により1年生全員がログインできるまで1週間程度を要しました。
オンライン学習は、リアルタイムで行う「双方向型」、事前に準備された動画を視聴する「録画視聴型」、掲示された課題を提出する「課題提出型」に分類されます。砺波高校の4・5月のオンライン学習は授業については確実に取り組める「録画視聴型」「課題提出型」を用い、個人面談や質問教室など、1対1またはそれに近いコミュニケーションについては「双方向型」を用いました。その理由は以下のとおりです。
・3月の調査において「双方向型」のミーティングができると回答した生徒が全体の 3分の2程度であった。また、「双方向型」の特徴である動画や音声での対話を希望した生徒が少なかった。
・「双方向型」の場合、送信側(学校側)のネットワークが混雑していると解像度が低くなり、文字が見えにくくなったり,音声が途切れたりする現象が見られる。
・「双方向型」は保護者のテレワークや大学生(兄・姉)のオンライン授業と重なった場合、家庭内での機器や通信回線の不足が予想される。一方、個人面談などであれば時間を柔軟に調整できる。
・「録画視聴型」は理解度に合わせて繰り返し視聴したり、早送りして学習できる。
・「録画視聴型」「課題提出型」は時間に縛られないため、生徒が自ら計画を立てて自立的に学習できる。
「録画視聴型」「課題提出型」のオンライン学習は各学年の多くの教科で実施されました。実習を伴う教科を除き、例年と同等の授業進度を確保した教科・科目が多くありました。また、「双方向型」の個人面談や質問教室は生徒の休校中の学習意欲を高める効果がありました。
5月中旬には感染が落ち着きはじめたため、各学年ごとの分散登校が開始され、6月には学校が感染に気をつけながら再開されました。
また、通常5月中旬に行っているPTA総会を行うことができなかったためGoogleフォームを利用した書面議決で行いました。
【コロナで学校のICT化が一気に加速】
文部科学省は令和元年にGIGAスクール構想を策定し、全国の児童・生徒1人に1台のコンピュータと高速ネットワークを整備することを目指しました。その背景として「日本の学校のICT環境が脆弱であるとともに、地域間での整備状況の格差が大きい」「学校の授業におけるデジタル機器の使用時間はOECD加盟国で最下位」「学校外でのICT利用は学習面ではOECD平均以下、学習外ではOECD平均以上(つまりゲームなどに用いることが多い)」ということがあったようです。
新型コロナウイルス感染症は対面で会話するときなどに口から出る「しぶき」などで感染することが多いため、対面によらない新しい形の教育が求められるようになりました。本校では早くからICTを用いた教育を進めてきましたが、さらに加速することになりました。
●Google Classroomの活用
これまで教育活動は対面が基本で行われてきました。しかしGoogle Workspace for Educationなどの教育プラットフォームを利用すればさらに教育活動が円滑、効率的に行うことができます。そして教育効果も高めることができます。
また、感染が落ち着いても再拡大するかわかりません。また自らが感染したり濃厚接触者になった場合は学校に登校できません。そのような場合に備えて各学年、授業、部活動などがGoogle Classroomを立ち上げ連絡や情報を提供するようになりました。
●ひとり一台タブレット
平成29年には本校にタブレットが40台配備されていたものの、1クラスが使用すれば他クラスは使用できないなど利便性は高くはありませんでした。こうした中、ひとり一台タブレットが配備されることとなり、令和3年7月上旬に端末が届き、各クラスで端末の設定を行いました。授業はもちろん、課題研究などさまざまな活動で利用できるようになりました。充電カートは旧食堂に設置されていますが、自宅へ持ち帰って使用することも可能です。家庭での学習に利用できるほか、新型コロナウイルス再拡大による休校などにも備えることができます。
●2年総合的な探究の時間の課題研究
2年生は週2時間、総合的な探究の時間に課題研究を行っています。1学期は調査研究の手法を「課題研究メソッド」を使って学び、夏以降は班に分かれてSDGsの観点から調査研究を行います。ひとり1台タブレットを活用することによりこれまで以上にスムーズに調査研究が進めることができます。
2学期末の課題研究発表会ではタブレットを片手に発表する班もあります。
また、課題研究で発表資料を作成するにあたり共有ドライブを利用すれば、共同編集が可能です。つまり複数の生徒が同時に1つのファイルを編集することができ、作業効率が上がるのです。また作業は生徒の自宅でも可能となります。
調査研究を進めるにあたり、アンケートをとることがありますが、Googleフォームで行ってスプレッドシートでデータ処理を行えば非常に効率的です。
●保護者もICTの利便性を体験
令和2年10月のPTA全体研修会では「これからの時代に求められる学びとICT活用」のテーマで時代とともに変化している学校教育につてお話しいただきました。そのなかで実際にスマートフォンを使用してICTを活用するメリットを体験しました。
【コロナウイルス再拡大・・・】
令和3年夏前までは感染が落ち着いていたものの、8月中旬にはデルタ株の拡大により後半の特別編成授業から学年ごとの分散登校となりました。本校は7月上旬にタブレットを配布し、Google ClassroomなどをつかったICT教育を進めてきたため、学校での授業と家庭での学習をスムーズに行うことができました。
分散登校中の授業の形態は、録画視聴型(17名、57%)、課題提出型(15名、50%)、ライブ配信型(8名、27%)、その他(5名、17%)でした(調査対象39名中回答30名、複数回答)。
生徒の感想は以下のとおりでした。
★録画視聴型授業について
・途中でいったん再生を停止し、自分なりに調べたり考えたりしてからもう一度視聴できるので、自分のペースで学習を進めることができる。
・普段の授業では考えているうちに板書やスライドが進み、ノートがとれないことがある。録画視聴型ではゆっくりとノートをとることができ、理解が深まった。
・配信時間が長い場合、集中力が途切れてしまうことがある。短くまとまっている場合は短時間で濃い学習ができる。
★ライブ配信型の授業について
・途中画面が粗く、見づらいことがある。
・リアルタイムで質問できるのがメリットだと思うが、慣れていないこともあり、マイクをONにして質問するのがためらわれた。
・チャットは比較的質問しやすい。
【ICTのこれから】
従来までの「読み・書き・そろばん」といった基本的な学習スタイルが重要であることは言うまでもありません。しかし、さらにICTを用いた教育により授業の幅が広がり、生徒の興味や関心が高まります。また、生徒が主体的・協同的な授業に参加できるようにもなります。
鉛筆や消しゴムなどの文房具と同じようにタブレットなどのICT機器が新たな学習ツールになる時代になるでしょう。